弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
なにを隠そう、わたしはちょろいのだ。
ついさっきフラれた元彼ユウジくんは、体育祭でリレーのアンカーを走っていて、それがかっこよくて。彼がゴールテープを切った瞬間、目が合った気がして、そしたら頭のなかでピンクが弾けたの。
乙女心って単純。
そして、いつもあえなくどん底につき落とされる。
「本気で好きになっちゃうんだもん……」
「で、中瀬はどんどん不幸になってく」
「ごもっともです……」
こいとかあいとか、向いてないんだと思う。
ほんとうの意味で両思いになれたことがないの。
傷ついて、落ちこんで、そればっかり。
「もうこんなのこりごりって毎回思うのになあ……。わたしだって、好きなひとと両思いになって、幸せになりたいだけなのに、どうしてこうも毎回うまくいかないのかな、ぶえええ」
悲しい。
おさまったはずの涙がまたぶわぶわ溢れてきて、弓木くんの前だということも忘れて、大号泣していると。
「だったら、幸せになれる恋愛すればいいだろ」
「ふえ……?」
「自分のこと好きなやつを好きになるとか」
「ぶええ、弓木くんはなにもわかってないよお……。そんなひと、都合よくいるわけないじゃん……!」
「探せばいるだろ、自分のことを好きな奴くらい」
しれっと言う弓木くんにカチンときた。
そんなことができるなら、わたしはこんな馬鹿のひとつおぼえみたいに失恋を繰り返したりしないもん。