弓木くんはどうやらわたしが好きらしい


隣の席で、中瀬がかわいい顔して他の男の話をするのを「へー」とか「そうなんだ」とか当たり障りない相槌を入れて、聞きながら、ほんとうは、次こそはってひそかに期待した。



次こそは、俺のこと好きになれ。

そろそろ俺を見ろよ。



なのにさ。




『本気で好きになっちゃうんだもん……』




中瀬は懲りもせずに変な男のことばっか追いかけて、何度もくだらない奴らに傷つけられて、泣かされて、そのとき俺がどんな気持ちでいたかも知らないで。



『わたしが失恋してメソメソしてるとき、なんか、いっつも弓木くんがそばにいる気がする……』



そうだよ。

正解だ。



他の男のことを考えて泣いてる中瀬を見るのは気に食わないし、中瀬を泣かせたやつも気に食わないし、でも、中瀬がクズ彼氏と別れて喜んでいる俺もいて、心のなかめちゃくちゃで。



でも、絶対、放っておけない。

涙なんかより、中瀬には笑顔の方がずっと似合うから。




それで、あわよくば、いつか。


いつか、俺を────なんて、わりと、長期戦のつもりでこれまで中瀬の失恋話の聞き役に徹してきたけれど。





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