弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
『わたしだって、好きなひとと両思いになって、幸せになりたいだけなのに、どうしてこうも毎回うまくいかないのかな』
ぐずぐずに泣く中瀬のことを見ていたら、いい加減、我慢できなくなった。
だったら、俺を好きになればいいのに。
俺なら、中瀬のことを泣かせたりしないのに。
リレーでアンカーを走るくらいでいいのなら、そんなもん、いくらだってやるのに。
……で、勢いで言ってしまった。
『俺が、中瀬に幸せな恋を教えてあげるって言ったらどうする?』
『付き合ってみる? 俺と』
あ゛────ダセエ。
ダサすぎる。
勢いで口からすべり落ちた告白は、あまりにも格好ついてなくて、もっと他に言い方あっただろって反省点しかない。
中瀬が俺のことを男として見てないってことは、嫌というほどわかっていた。
あっさり断られるだろうってことも、予想の範囲内で、だから、予防線を張った。
『お試しで』
つくづく、ダサすぎる。
それでも、中瀬が頷いてくれて、あのとき俺が内心ガッツポーズしてたなんて、中瀬は知らないだろうし、知らないままでいい。
あくまで “仮” なのに、その夜一晩中浮かれていたことだって、知らなくていい。