弓木くんはどうやらわたしが好きらしい


それで、浮かれたついでにデートにこぎつけた。



『えへへ、ありがとう、弓木くん』

『一晩中弓木くんのことばっかり頭のなかでぐるぐるぐるぐる考えて、眠れなかったの……っ』




なんだそれ。

────かわいすぎる。



俺ばっかり、中瀬のことばっかり考えて、中瀬の一挙一動に振り回されて、夢中で、おかしくなりそう。


あーあ、早く、俺のこと、好きになってよ。




風呂から上がって、ベッドにボフッと背中を預けると、抱き枕にちょうどいいサイズのハニワのぬいぐるみが視界に入ってくる。


中瀬がUFOキャッチャーで取ってくれたものだ。


べつに、ハニワのことが特別好きとかかわいいとか、思っているわけじゃないけれど、よく会話に登場するせいか、見ると中瀬を思い出すから、つい目に止まってしまうだけ。




「はー……」




埴輪に興奮するなんて、マジで、末期だ。

恋心なんてものが、こんなに厄介だなんて、中瀬に落とされるまで知らなかった。



“仮彼女” ────せっかくここまで駒を進めたんだ。

このチャンスを逃がすわけにはいかない。

攻めて、攻めて、攻めまくる。



覚悟しとけよ、と勝手に心の中で宣戦布告した。



だからさ。

いい加減こっち向けよ、中瀬。





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