弓木くんはどうやらわたしが好きらしい


絶望で、みるみるうちに青ざめていく。

平均点、下回っているどころじゃない。
定期テストでこれより難易度の高い問題を出されたら、わたし、どうなっちゃうの……?!



確実に赤点だ。

赤点なんて取ったあかつきには、ほ、ほ、ほ、補習……。



絶望的なのは、わたしの場合、勉強をしなかったからできなかったわけじゃないってこと。

ちゃんと真面目に授業を受けて、わたしなりに必死に頑張ったつもりで、この点数なの。



数学はもともと苦手。
だけど、こんなにひどいのははじめてだ。



授業の終わりのチャイムが教室に響きわたって、クラスメイトたちが移動教室の準備をしはじめても、あまりの絶望に打ちひしがれて固まっていたら。



「中瀬、生きてる?」

「わわっ」



とつぜん、弓木くんのどアップ。
正面に回りこんで、顔をのぞきこんできた。




「生きてるよ、かろうじて……」

「今にも死にそうな顔してるけど。顔色、須恵器みたい」

「いちいち土器にたとえないでよお……っ」

「だって、中瀬、土器好きじゃん」



好きじゃないよ!

弓木くんのなかで、なぜかわたしは、土器好きキャラらしい。


だいたい、土器が好きなのは弓木くんの方だよね。

この前だって、ハニワのぬいぐるみをあんなに欲しそうに見つめてて……。



「このままだと、わたし、補習組になる……」

「数学研究室で、蒸し暑い中、ノブナガとふたりきり」

「最悪だ」




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