弓木くんはどうやらわたしが好きらしい

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「あれ……、弓木くんって視力、悪かったのっ?」



放課後。

みんなが帰った教室で、弓木くんとふたりきり。


数学の教科書をがさごそ取り出すわたしを横目に、弓木くんがメガネをかけ始めたから、驚いた。




「ちょっとだけ。夕方になると視力落ちるんだよな」

「へえ……」



2年間も隣の席なのに、知らなかった。


弓木くんの瞳はいつも透きとおっていて涼しげだけれど、黒縁メガネのレンズを透かしてみると、さらにクールに見える。

そもそも、弓木くんは前提として、顔がいい。


整った顔立ちには何だって似合うんだな、と再確認した。




「そんなにじろじろ見られると、顔に穴あくんだけど」

「!」

「もしかして、見惚れてた?」



自意識過剰……!

と言いたいところだけど、図星なので、言えない。

だって、改めてじっくり見てみると。



「弓木くんの顔、キレーで、好きだなあって」



ひとつひとつのパーツが整っていて、配置もよくて、おまけに肌もつるすべだ。羨ましい。


そりゃあ、おモテになるよね、と腑に落ちる。


誰がどう見たって格好いいもん、とふむふむ納得しながら、まじまじ見つめていると、弓木くんは、ごほっと咳払いした。




「っ、あ、そ」




ほんのり紅く染まった耳。
あれ、もしかして、弓木くん、照れてる……?

確信を持つ前に、弓木くんがわたしの邪念をぶった斬る。



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