弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
「その格好で帰るつもり?」
「か、格好……?」
いつもと同じ制服なんだけどな。
ブラウスにスカート、紐リボンに紺ソ、ローファー。
なにを言われているかまったくわからず、きょとんとするばかりのわたしに、弓木くんは「はあ」とため息をついた。
「その状態で、電車なんか乗せられるわけない」
「えと……」
「ましてや帰宅ラッシュの満員電車とか、ありえねーから、まじで」
「ゆ、弓木くん?」
雨は容赦なく降り注いでくる。
どんどん制服が重たくなって、体温も奪われて、なるべく早く帰った方がいいのに、弓木くんが手を離してくれないせいで、動けない。
おろおろしていると突然、背中にバサッとなにかを被せられた。
「とりあえずそれ着て」
「えっ? 何これ……弓木くんのジャージ……?」