弓木くんはどうやらわたしが好きらしい


「はあ? 違……」

「さすが弓木くんだ。わたし、他の人のことまで考えられてなかった! 公共交通機関だもん、ちゃんと周りの人のことまで考えなきゃなのに〜っ」

「……はー、もういーよ、それで」



なぜか呆れた様子でこめかみを押さえた弓木くん。

わたしの腕をくんっと引く。



「とりあえず、俺の家ならここから歩いても行けるから。服乾かして、雨宿りしてから帰ればいい。ちなみに拒否権はナシ」

「ひえっ」



オーボーだ。


もしかして、わたしがずぶ濡れのまま電車に乗ろうとするなんてモラルのないことをしようとしたから、弓木くん、怒っているのかもしれない。



「わかった?」

「はいっ!」




反省の意をこめて、気合いを入れて頷いて。

弓木くんに手を引かれて、シャワーみたいな雨のなか、ふたり、手を繋いで走った。





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