弓木くんはどうやらわたしが好きらしい


𓐍
𓏸



「お……おじゃましまあす」

「そんなかしこまらなくても。今日、ちょうど親いないし」




一足先に靴を脱いで上がった弓木くんがタオルで濡れた髪を拭いながら、わたしを中へと促す。


しっとり濡れた黒髪をかきあげる仕草が、妙に色っぽい。

これが “水もしたたるイイオトコ” ってやつですか。




ていうか、聞き流してしまったけれど、『親いない』って、しかも『ちょうど』って、どういう意味で……。


勉強会のときから、おかしいな、弓木くんの言動がいちいち心にひっかかって、ざわざわする。




「中瀬、風呂入る?」

「へぇっ?!」




弓木くんが貸してくれた、ふわふわのタオルで水分で重くなった髪をしぼっていると、まさかの衝撃発言。



お風呂……!?

な、な、なんで……っ?




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