弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
「やっ、いいよ! それはお金かかっちゃうし!」
反射的に首を横にふって、一瞬のちに気づく。
あれ……この流れだと、わたし、このままここに泊まるってことに────ええい、やめやめ、考えるのはやめ。
深く考えると余計にダメになる気がして、ついに腹をくくる。女は度胸だ。
「ええと……、泊まらせてもらっても、いいですか」
「どーぞ」
「……っ。じゃあ、えーと、お母さんに電話してもいいっ?」
ぎこちなく許可を得て、スマホでお母さんに電話をかける。
1コール、2コール、3コールでぷつっと繋がった。
「もしもし、お母さん? ……うん、そう、そうなの、もう学校は出てるんだけど……。そう、雨がすごくて今ね、雨宿りさせてもらってて」
誰のところ? とお母さんに聞かれて、思わずちらりと弓木くんを見てしまう。
キレーな横顔のEラインに心臓が高鳴った。
「えっとね、みかちゃん! そう、みかちゃんの家! ────うん。それでね、あのね、今日はみかちゃん家が泊めてくれるって。だから……うん。うん、わかった。明日の朝帰るねっ。うん、じゃあ、おやすみなさい」