弓木くんはどうやらわたしが好きらしい
どうしよう、嘘をついてしまった。
ただ、善意で雨宿りさせてもらうだけ。
やましいことなんてなにもないはずなのに、お母さんに嘘をついたことで、やましいことをしているような気がしてくる。
ドキドキと変な動悸までしてきた。
「俺、いつから “みかちゃん” ?」
「……う」
いじわるく笑う弓木くんが追いうちをかけてくる。
でもその笑みはどこか満足げだった。
ていうか、わたし、まだ弓木くんの膝に乗ったまま……。
「なんか、腹減ってきたな」
唐突に弓木くんが呟く。
いや、よく考えれば唐突でもなんでもない。
時計の針は気づけばぐるぐる回って、もう夕食どき。
「そうだ! わたし、なにか作るよ、夕ごはん!」
ようやく膝の上から降りる口実を見つけて、ぴょんと飛び降りた。
それに、泊めてもらうんだから、料理くらいはしないとわりに合わないよね。
「あれ、中瀬って料理できたんだ?」
「しっ、失礼な……。人並みにはできるよっ、人並みには!」
「じゃー、お手並み拝見だ」