マドレーヌは甘すぎず
口元を隠して噛んでは、また少しかじって食べる七瀬さんの顔に、私はしばらく見とれていた。
1つ、2つと七瀬さんがゆっくりと食べてくださる。みとれている私と目が合うと、七瀬さんはまた目を細めて微笑んでくださる。気づくと、私の頬に涙が伝う。

「どうなさったの?……泣いているの?」

「七瀬さん…!!私の大好きな七瀬さん……」

大きな瞳で、私の顔を心配そうに覗き込む。こんな私を心配してくれることに少し頬が赤らむも、私の涙と嗚咽は止まらない。七瀬さんが私の背中に手を添えようとその美しい腕を伸ばす。しかし、私の背中には届かず、そのまま身体ごと地面に向かって落ちてゆく。鈍い音とともに七瀬さんの身体が私の足元に横たわる。
気づくと、大きな瞳も閉じていて、息もしていない。私はしゃがみこみ、七瀬さんの冷たくなってゆく手をそっと握りしめる。
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