淋れた魔法
「いや、いいなって思って」
確実にバカにされてる。
「側から見ればビビッてんのがわかるくらい誰とも丁寧に付き合えるやつが、唯一荒っぽくなれる、真っ直ぐな恋愛」
「…しね、まじうざい、きもい、うるさい」
「悪口のクオリティー、小学生かよ」
「バカにすんじゃねーよ。教師だからって、大人だからって、そんなに偉いのかよ。こっちは失恋してんだよ」
おれが見ていたのは、おれがつくった理想のゆり先輩。
口説いていたのは、絶対におれの手に入らないからこその先輩。
誰に対してもテキトウに、のらりくらり、当たり障りなく、周りが求めるような自分を取り繕って、そういう自分のこと、薄汚いって思ってた。
自分のことなのに本心なんてどこにあるのかもわからないし、どこにもないんじゃないかと思うと自嘲えた。
代わりに、きれいなゆり先輩をつくって、勝手に自分ひとりが見つけた特別なものだと思い込んで。
絶対に汚せないから、触れたくても触れないし、同じ気持ちになれなくても仕方ないって、むしろ手に入らないプレミアム感?それをバカみたいに感じてた。
そういうものだった。
だけど。
でも、それって。
ゆり先輩にとっては迷惑だったかもしれない。
きもちわるかったかもしれない。
つーかそう言ってたし、そうなんだろうけど。
だけど、おれの言いぶんとしては。