淋れた魔法
見せつけられた放課後
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自分に自信を持ってるんだろうなあというタイプの子とうまく関係を築けた試しがない。威張るわりに、強要してきたり、仲間に率いれたり、自分以外の人間も自分と同じだと思い込んでるふしがある。ダサいよね。
高校生になってすぐに入部した部活動で散々な目にあって退部したのが、最初の逃避だった。
とにかくひねくれた思考を持っていた。そんなわたしに「人と会話するのに疲れたなら本でも読めば。一人でぼーっとしてるよりはマシだと思うよ」と暇の潰しかたを教えてくれたのは、2年に進級した頃に転任してきた水島励先生だった。
たまたま図書委員になって、たまたま先生と関わる機会があって、気付いたらそんなふうに、なんでも先生になら打ち明けられるようになった。
わたしが学校で唯一喋る相手だったからかな。
そのうち知り合うことになる2学年後輩の彼は、わたしが先生を好きだと思っていたみたい。
きみが初めて図書室に来た時、わたしはたまたま図書委員の仕事をしていただけ。毎日なんて通ったことなかったのに。
気づいたら、きみが来るかもしれないって、待つようになった。
本なんてそっちのけ。
「ゆり先輩」
曇りのない明るい声がわたしだけに向けられる瞬間が、たまらなく好きだった。
そう。高校3年生のとき、いろんなものから逃げた先で、初めて恋というものをした。
彼は1年生ながらとても目立つひとだったから、学年が違っても、どこにいても、図書室じゃなくても、放課後じゃなくても、誰といても目に留まった。
「ゆり先輩はもっと自信持てばいーのに」
そういうけど、彼はたぶん、自信を持たないわたしに会いに、わざわざ毎日放課後の図書室まで来ていたと思う。