戀を手向ける
恋
風紀委員のクラスメイト・藤宮守寿の葬式は、ぞっとするほど雲ひとつない青空が広がる午前中におこなわれた。
初めて制服をマニュアル通りに着た俺を見た担任はいつも煩い口を結び下手くそな笑みをつくる。
来ているほとんどが顔を拭う仕草をしながら棺に花を供え、震えた声で彼女の名前を呼ぶ。
読経が終わりその場にいた全員が焼香を済ませると、その白箱はゆっくりと火葬炉へ入っていく。
その扉が閉まったのを見て踵を返し、憎いくらいの晴れ空の下に出た。
こんな真夏に暑くてしょうがねえよ。夏休みなのに呼び出すんじゃねえよ。
だいたい白い着物とか濃い化粧とか似合ってなかったし。わたしの体温あったかいんだよって言ってたけどすげー冷たかったし。マシュマロボディで魅力的でしょって言ってたけどすげー硬かったし。
しばらくして白い煙が空へあがっていくのが見えた。
あんなのさえあいつは好きだって言うのかな。
そもそもあいつが好きじゃないものって何かあったのかな。
────「いくなよ」
そう、何度も身体の内側で言い続けた。
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