戀を手向ける


「あ、見て、中学生の直矢くん、顔にけがしてる。これで写真撮ったの、問題児みたいだね」


実際そうだったと思う。よく高校行けたなって感じ。しかもこいつみたいに真面目にがんばってるやつが受かるような学校。


「でも直矢くんは、ただみんなと同じことをするのが苦手なだけなんだよね。というか、周りのことぜんぜん気にしてないしどうでもいいって思ってるからみんなが何してるのかどう思ってるのか知らないだけなんだよね」

「…なに、わかったような、こと」

「わかるでしょ。人類が全員直矢くんだったらぜったい世界平和だよ!」


俺は中学の時、親にやることないなら勉強しろって口酸っぱく言われたからやって今の学校に合格した。

それでもって、じつは藤宮守寿はちょっとバカ。それを誤魔化すのがうまいだけ。


「全員俺とか、きも」


ちょっと想像して眉を寄せる。やばい。こいつの頭どうなってんの?


「直矢くんすごいかっこいいから気持ち悪くないよ!あ、でも、わたしはきっとそのなかでも今ここにいる直矢くんのことは絶対に見つけられるよ」


全員俺なんじゃねえのかよ、と心のなかでつっこむ。藤宮守寿ワールドに水を差すとうまく丸め込もうとしてくるからよけいめんどくさいことになる。



「あのさ、前から思ってたんだけど」

「なになに?」


そんな身を乗り出されるようなことじゃないんだけど…勝手に期待されても、困る。


「あんまこう…さらっと褒めるようなこと言わないでくんない?慣れてねえんだわ、おまえみたいに直球な感じも、褒められることも。人と話すことも得意じゃねえのに…ぜったい見つける、とか、か…こいいとか…」


言わなきゃよかった。言った瞬間後悔した。今までで一番の後悔。しょぼ。


「直矢くん、こっち向いて」

「…無理」

「無理じゃないでしょ。わたしのこと見て」

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