戀を手向ける
「あの、話って…」
おそるおそる、伺うように、失礼のないように、だけど直球で尋ねた。
正直気になって仕方ない。
藤宮守寿の両親と妹はすげー良いひとたちだけど、彼氏ではないとはっきり紹介された俺のことを内心どう思っているのかわからない。
でも金色の髪をしていても何も言ってこないところはこいつの親なんだなって思う。
「これ…あの子の手紙なんだけどね」
そう言って目の前に差し出されたそれ。
藤宮守寿は「ぎゃあああああ」と色気も何もない本気の叫び声をあげだして、思わず肩が上がってしまった。
その様子を不思議そうに見るお父さんとお母さんに、俺だけが見えていることが申し訳なくなる。
「あ、いや、なんでもないです……あの、手紙が、どうしたんですか」
「誰宛てか書いてなかったから見ちゃったの。私たち宛てだったんだけど、直矢くんのことも書いてあったの」
「え、俺のこと、ですか」
まだ騒いでいる彼女を鬱陶しく思って見上げると、首を横に振って何かを訴えてくる。中身を俺に知られたくないみたいだった。
「葬儀以外にも直矢くんを呼んでほしい、本当の最後まで直矢くんに見届けてほしい。そう書かれてたから着てくれるようにお願いしちゃったけど、親族ばっかりで居心地悪かったでしょ。私たちもあまり余裕がなくて…ごめんなさいね」
「あ、いえ…謝ることじゃ……」
なんなんだよ。おまえが俺を呼べって書いてたのかよ。
じろりと睨むと肩をすくめて「それ以上のことは絶対聞かないで!」と念押ししてくる。ふざけんなよ。全部聞いてやる。
「それでね、直矢くんにはこれからもあるから言うかどうか迷ったんだけど……あの子、直矢くんのこと……」
「お母さん言っちゃだめ!!!」