戀を手向ける


一日を海を眺めて過ごしたあの冬の日以降、藤宮守寿の体調は良好とは言い難い日が続いた。

それでも毎朝全校生徒よりも早く登校して、放課後は学校まわり…と風紀委員の仕事をがんばっていた。無理をしていることはなんとなくわかっていたけど、止めることはできなかった。


全校集会で委員会の活動発表の最中に盛大に倒れる彼女を見ても、それでも。やりたいことを精いっぱい全うしたその姿はかっこいいとさえ思った。


きつい治療。思い通りにいかない入院生活。

ベッドで寝転がっているだけなのに肩で息をする。

マシュマロボディなんだよって自慢していたくせにどんどんか細くなっていく青白い身体。虚ろな目。いつまでも寄せられた眉。渇いたくちびる。車いすを頼ってする移動。


それでも、お見舞いに行けば笑顔をつくって迎えてくれる。


強がり。

だけど、それがきっと、今までずっと続いてきた藤宮守寿の生きかただった。



「ねえ直矢くん、クラス替えどうだった!?」


今までで一番長く感じた春休みが終わり始業式のあと病室に入ると真っ先に聞かれた。


「最悪だよ」

「どうして?」

「またおまえと同じクラスだった」

「うそ!すごくない?うれしいの間違いでしょ」

「おまえがいるとうるせえんだよ。見張りうぜえし」

「ぶふふ。うれしそうだね」

「……」


うれしくねえっつってんだろ。

だけど何を言っても本心がバレるなら、さっさと早く学校に来て、思う存分見張ればいいよ。

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