俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
■快side
「社長、お待たせしました」
馴染みのある落ち着いた声が耳に届き、俺は視線を上げた。
腕に絡みつくラウンジ嬢に微笑みかけ、やんわりと腕を解く。
「さすがだな、時間通り電話から三十分ぴったりだ」
「いえ、大事な接待の場に私を呼んでくださってありがとうございます」
部屋の扉の入り口に立つ結城は、台場からタクシーを飛ばしてきたというのに、頭の先からつま先まで出勤時とは何ら変わった様子は見受けられない。
きっちりと髪をアップにし、シワひとつないジャケットを羽織って余裕で微笑んでいる。
見当違いかと、少しだけ残念に思う。
「ところでルイさんはどちらにいらっしゃいますでしょうか」
メガネの奥で丸々とした目がパチッと開いた。
「タイプの女性を見つけたようで、少しだけ席を外しているよ」
「そうですか」
結城は一瞬目を見開くが、すぐ口元を緩めた。
特段嫌悪感も感じられない。