俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
彼は私から手を離すと、再び楽しげに微笑んだ。
「出張中、ひどいいやがらせでもされたら俺に連絡してくれてもいいけど」
「いえ……そんなことはできません。迷惑をおかけして、申し訳ありません」
(私は本当に結城家具の娘なのに、藤堂快に頼るなんて図々しいことできない)
深々と頭を下げていると、彼はクルッと背を向けた。
「なら後は頼む。とりあえず華に何を言われても気にするなよ」
社長はそう言葉を残し、用意を済ませさっさと社長室を後にした。
彼は今日の会食が終わり、明日から2日間地方出張の予定。
『藤堂快』という心強い存在が数日不在と考えると、やはり不安な気持ちが押し寄せる。
(あの様子は、社長も結城家具だって知ってるみたいだった。
なぜ怒ったり、追及することなくクビにしないと言ってくれたのだろう……?)
「分からない……」