俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
あれから数日……現在14時30分。
今日は社長とルイさんが地方から出張に帰ってくる。
私は彼らを、いつものようにパソコンを打ちながら待っていた。

(社長、もうそろそろ戻ってくるな。15時からパリ視察の最終ミーティング……)

彼らがいない私のこの数日間はというと、まさに針の(むしろ)だった。
エレベーターに乗っている時、社内を移動している時の社員の視線は息が詰まるほど……社内に残っていた華さんは私に話してこなかった。

「はぁ、さすがに緊張するな……」

一番上の引き出しに忍ばせている『退職届』を見て、息をひそめる。

(今日のミーティングが終わったタイミングで、まずは相談しよう)

もう美晴といた時のように、胸が苦しくなることはない。
自分の気持ちを素直に認め、諦めると決めたから落ち着いた。
藤堂快に好きという気持ちを、伝えるかはいまだに決めかねているけど。

(10年越しに告白して玉砕されたら、さすがに堪えるだろうなぁ……悩みどころだ)

うーんと頭を抱えた、その時。

「芽衣、お疲れ様」
「社長……!」
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