俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
今日の社長は前髪を下ろし、グレーのスーツを着ていつもより少しカジュアルだ。
少しだけ幼く見えて、不覚にも少しだけキュンときてしまった。

(っと、胸キュンしてる場合じゃない!)

「社長、お疲れ様です。本日は第一会議室で15時よりパリ視察のミーティングになります」

私が伝えると、社長はクールな表情のままこちらに向かって軽く手招きした。

「今日はお前も一緒に来てほしいんだ。現地で何かあった時の対応をお願いするかもしれないから。大丈夫か?」

「えっ、それは……はい!」

これまでスタッフのミーティングに私がお邪魔したことはない。
ホテル建設の社長に関するスケジュール管理が私の仕事なので、内部の話を聞けると思うと少しだけ胸が高鳴った。

(はっ、でもこの状況だとみんな私がいると嫌がるんじゃ……)

「社長、やっぱり私!」

断るために顔を上げると、すでに社長はエレベーターに乗り込むところだった。

(仕方ない。これは社長の命令……もうすぐ辞める身だし、皆さんごめんなさい)
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