俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う

(ん? 一緒に行く? 私が?)

社長の言葉に、思考がフリーズする。
それは周りの皆も同じようで、一瞬その場が静まり返った。
……けどすぐに、華さんが椅子から立ち上がり沈黙を破る。

「快、一体何を考えてるの⁉ 彼女の件は私から忠告……」

「華。さっきから俺を名前で呼ぶが、仕事の最中は社長と呼んでほしい。仕事とプライベートは分けろ」

社長は厳しい言葉で華さんの言葉を遮った。

(社長……本当になんで私を連れていくの?)

困惑する社員を見渡しながら、社長は口を開く。

「ここにいる皆は今まで俺が歴代の秘書で頭を悩ませているのをご存じだと思うが、彼女はようやく見つけた手元に置いておきたい人材だ……たとえ彼女の家がどうだろうと、俺が決めた秘書をお前たちにとやかく言われる筋合いはない。それに……」

社長はそう言って、私に視線を送る。

「結城は今回のプロジェクトのターゲット層にすごく当てはまっている。
アラサーで『Berry.By.KAI』の長年の大ファン……顧客目線で意見をもらいたい。いいだろ?」

(な、なんだ。そういうことか……)
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