俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
二人はしっかりと握手を交わしているけれど、無言だ。
社長は目が全く笑っていないし、遠藤さんは苦笑いをしているようにも見える。
(二人とも、あんまり仲良くないのかな)
張り詰めた空気に居心地の悪さを感じていると、ルイさんが私たちの間に立った。
「『Berry.By.KAI』の立ち上げメンバーがこうやって再集結する日が来るなんて感動だよ。絶対に最高のものができるね」
(えっ……)
「じゃあ遠藤さんは、もともとCLBKにいて、今はルイさんのホテルに移ったということですか?」
私が思わず口を挟むと、遠藤さんは苦々しい顔で社長から手を離す。
「そういうことになります……じゃあ、僕は他の皆さんにも挨拶してくる。これからよろしくね」
遠藤さんはそう言い残し、足早にCLBK一行の元へ向かっていった。
「遠藤さんも華さんと似た経歴をお持ちなんだ……とても心強いですね、社長」
空気を変えるために私が明るく話しかけるけれど、社長は遠藤さんの後ろ姿を見つめたまま厳しい表情で口をつぐんでいる。
どこか寂し気にも見える彼の横顔に、変な胸騒ぎを感じた。
(どうしちゃったんだろう……この一年、社長のこんな顔見たことない)