俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
「代わりのアートディレクターを確保した。すでに俺が直談判して、承諾を得ている」
「ほっ、本当ですか!? まさか、社長も探してくださっていたなんて」

いつもは冷静の結城も、驚き半分嬉しさ半分といった様子でさりげなく失礼なことを口走っている。
まぁ、そうなってしまうのは無理はないのだが。

というのも自社で長年ディレクターを務めていた男が薬で捕まるという惨事に、俺たちは見舞われていたのだ。

更に運の悪いことに、彼は来週から本格始動するホテル建設のアートディレクターの就任が決まっていた。
その事実が公に知られてしまえばブランドのイメージダウンは免れない。
記者会見前に内密に代わりとなる人物を全力で探していたというわけだ。
……主に結城が。

「それで、なんという方なのでしょうか。インテリアデザイナーの方ですか、それとも……」

名を告げようとしたその時、ふわりと清涼なシプレの香りが僅かに香ってくる。

『ボンソワール、マドモアゼル』
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