俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
「……っ」
すんなりと許しが出て、拍子抜けするのと同時に胸が痛む。
(なんでここまで言って傷ついてるの……私……)
「であれば、俺と結婚するしかないな。芽衣」
「……え?」
(結婚……今なんて?)
まったく現実味のない言葉が頭に反響して、大きなはてなが頭上に浮かぶ。
社長は微笑みながら私の頭をポンと撫で、現実に引き戻した。
「俺は芽衣が好きだ」
「えっ⁉」
突然の告白に、心臓が大きく跳ね上がる。
私を見つめる社長の目は、真剣そのものだ。
鋭い光を光らせ、私の反応をうかがっている。
「えーーーー……と、少々お待ちください。頭を整理しますので……」
(順番を整理すると、私は今、告白されて、プロポーズも同時にされ……た?
う、ウソ……)
社長との距離は、知らないうちに二十センチくらいにまで縮まっている。
よく知る香水が濃厚に香ってきて、よけいに頭がクラクラしてきた。
「芽衣が女の幸せを考えているのであれば、俺が幸せにするだけだ。
……で。芽衣、返事は?」
「……っ」
彼は何かを確信したのか、すでに余裕たっぷりに笑っている。
うっかり首を縦に降りそうなところを、理性がストッパーをかけた。
「ちょっ、ちょっと待ってください! 華さん! 華さんの件です……!」