俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
(そうだ、忘れちゃいけない華さんの件!)

私は社長の厚い胸板を押しのけ、一定の距離を保つ。

「さっき、華さんと橋で偶然会ったんです。そこで色々教えてもらいました……!
社長が今日、他の社員とお昼にデートしてたこと……それに……過去に華さんと結婚する予定でいて、破談になったことも」

「何?」

社長の顔が途端に険しくなる。
怖気づきそうになりながらも、必死で事実確認をとらねばと心を奮い立たせた。

「社長が女の人が好きなのは私も重々承知です……ですが、華さんと結婚を約束していたのにも関わらず浮気をされていたことが、どうしても私は引っかかって……どうなんですか? 社長……」

「…………」

社長は黙ったまま私を見る。
その目はどこか寂し気で、心の中の不安がどんどん広がっていった。

(どうして、何も言わないの……?)

意味深な間の後……彼は、ふぅ……と息を吐き、わずかに口角を上げた。

「身の潔白を晴らすために、話すしかないな。華とのこと」
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