俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
外気で冷え切ったマカロンの箱を思わずギュッと握ると、彼はそのまま話を続けた。
「……それから、華の言う通り、彼女と婚約破棄したのは事実だ。
俺が浮気したのではなく、彼女が遠藤と浮気したのが原因だけど」
「えっ⁉」
社長に華さんから聞いた真逆のことを言われて、素っ頓狂な声を上げる。
(一体、どういうこと……? どっちが本当⁉)
呆然とする私を、社長は気まずそうな顔で見つめている。
「俺が女性と遊んでいる姿をお前は散々見てきたのだから、華の言うことを信じる気持ちは分かる……だが、今から話すことが事実だ。ルイに聞けばすべて俺の話と一致しているはずだ」
「え……えええ……⁉」
――その後、私は社長から華さんとの間にあった内容を一通り聞いた。
(ああ……どうしよう。すっかり華さんの言っていること信じてたけど、社長はウソが大嫌いなのはよーく知っているし……華さんは私を目の敵にしているし。
第一、遠藤さんと華さんが一緒にルイさんの会社に移ったことも、すごく納得がいく)
彼女の言っていることを鵜呑みにしてしまった自分に、今さら後悔する。
なんとか社長が話した内容を頭で整理していると、彼ははぁ、と大きなため息を漏らした。
「市場で遠藤との過去を聞かれた時に……言えなかった。
それは、お前に弱さを見せることになるからな」