俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う

「……っ」

『藤堂快』としてのプライド……長年彼を見てきたからこそ、納得してしまう。

(誰だってその内容が事実なら言いにくいに決まってるよ。
まして、いつも堂々としてる社長が簡単に言えるわけがない……)

でも、彼は私に話したのだ。

「過去を上書きしたくて、たくさん遊んだ。だけど、あれから女性を好きになったことはない。本気で恋愛しようともしていなかった」

胸が痛くてうつむいていると、落ち着いた声で『芽衣』と名前を呼ばれる。

(え……)

顔を上げると、社長の深い瞳には私だけが映し出されていた。

「お前には感謝してる。知らないうちに俺はお前に癒されていて、前を向けてたから」

「……っ、社長」

「恋愛したいんだ……お前と。
芽衣を離したくないし、ずっと隣にいてくれたらと思ってる。好きだ」

彼のまっすぐな言葉が、冷え切った体を熱くさせる。
喜びがあっという間に胸いっぱいに広がって、言葉に詰まった。

(社長は本当に、言ってくれてる)

気が緩むと涙が出そうで、グッと耐える。
ここまで言ってもらって、ありのままの気持ちを誤魔化すことはできない。
ただ伝えたかった。

「……私も、好きです。社長のことが」
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