俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う

確実に窓を叩いた音に、泥棒なんではないかと冷や汗が噴き出す。
部屋に立てかけてある昔剣道部で使っていた竹刀をすばやく持ち、足音を立てずにカーテンに近づいていった。

「ど、泥棒だったら一突きに……」

物騒なことを呟きながら勢いよくシャッ! とカーテンを開けると……。

「快⁉」

「お嬢様?」

扉の向こうから監視に尋ねられ、はっと息をひそめる。

(し、静かにしないと……!)

窓の外にいるスーツ姿の快は、驚く私に鍵を開けてとジェスチャーする。

「(元気だったか、芽衣)」
「(ど、どうしてここに⁉ それにこの部屋、二階なのに⁉)」

窓を開けてすぐに分かった。彼はハシゴを使ってここに来たようだ。
彼は声を潜めながら、私の耳元にそっと唇を寄せる。

「芽衣のご両親に協力してもらって、家の中に入れてもらった。芽衣、今から下に降りて来てほしい。これからの事をお二人に相談させてもらえることになったから……そして明日にでも、おじいさんに会いたいと伝えてある」

「……っ、快」

ふと視界を落とすと、庭にはお父さんとお母さんが心配そうな顔で私たちを見上げていた。

(二人とも、私たちの話ちゃんと聞こうとしてくれてるんだ……)
< 203 / 225 >

この作品をシェア

pagetop