俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
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こうしてハシゴを使い下に降りた私は、快と両親と一緒に一階にある八畳ほどの客間に入る。ここは角部屋であり、庭からすぐなので監視の目を無事に逃れることができた。
早速部屋の中央で、お母さんたちと私たちは対面する。
(緊張してきた……)
と。隣で正座をした快が、スッと深々と頭を下げた。
「快……⁉」
突然のことに私は目を丸くし、まだ顔を上げない彼を凝視する。
「僕たちのことで結城家具の混乱を招いてしまい、大変申し訳ありません」
「……っ」
その切実な声に、ズキンッと胸が痛む。
(私、まだ謝ってなかった……おじいちゃんにも、お父さんたちにも)
事の重大さをより痛感し、私も彼に続いて深々と頭を下げる。
「本当に、二人ともごめんなさい」
「…………」
しばしの沈黙が流れ、よけいに胸が痛くなる。
するとお父さんがふぅと息を吐き、ポンポンと私たちの肩を叩いた。
「もういいよ、二人とも顔を上げなさい。僕は怒っていないから」
「私もよ、芽衣と快君」
「……っ」
ゆっくりと顔を上げると、お父さんもお母さんも少し困ったように笑っていた。
「一回挫折した芽衣がここまで頑張れたのは快君のおかげって私知ってるの。だから私は快君に感謝してる」
お母さんに続き、お父さんも口を開く。
「好きになったものは仕方ない! 母さんからいろいろと聞いたが、芽衣は十年かけて快君と結ばれたんだから、諦めさせる方が酷だよ。二人には幸せになってほしいな」
(お父さん、お母さん……)
うるっと涙がこみ上げてきたその時、再び快は頭を下げた。
「本当に、ありがとうございます。芽衣とは結婚を視野に、真剣にお付き合いさせてもらっています」