俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
満面の笑みで心から伝えてくれる彼の優しさに、胸が熱くなる。
快は二人分のシャンパンを注ぎ、私の横に座った。
「あとだいぶ前になるが、お前が秘書として頑張ってくれたホテル建設も大きな賞を獲ることができたよ。心から感謝してる」
「いいえ……私は快をずっと信じてただけだよ」
吸い寄せられるように、私は快の漆黒の瞳をうっとりと見つめる。
普段の彼の瞳は深くて、するどい。
でも私と二人きりのときは、温かい光が灯っている。
「ハリウッド映画の件も、快の姿を見て私もやらなくちゃなって勇気が出た。感謝しなくちゃいけないのは私のほう」
思いの丈を伝えると、快は心底嬉しそうに目を緩める。
「そうか。じゃあお互い様だな」
「うん」
幸せな気持ちで笑顔がこぼれた。
私たちは互いにシャンパンを傾けた後、時間を忘れて甘い口づけを交わす。
(この先ずっと、快とこうやっていろんな成功をお祝いしたい。
でも近い将来、赤ちゃんも一緒にね)
私はこの時、心の中で願いを唱えた。
もうすでに、私たちの小さな芽がお腹にいることを知らないまま――。
END.