俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
私は入社試験からこれまで、結城家具の娘だということは断固として公言していなかった。
純粋に『Berry.by.KAI』のブランドが好きで入社試験を受けたと言っても信じてもらえないだろうし、スパイだと思われるに違いないからだ。
そして実家にも母以外にはここで働いていることは言っていない。
(実家にはいずれ戻ることになる。重要ポストなんて器じゃないし、普通の従業員としてだけど)
ため息をつきかけていると、華さんは思い出したようにクスッと小さく笑う。
「あぁでも、新しい社長さんになってから方針がブレブレで結城家具は赤字続きみたいね。ライバルっていうのはだいぶ昔の話になるのかしら。社長変えなきゃよかったのにね」
「!」
「あの名物社長もかなり歳だから、仕方ないんじゃないか」
華さんと社長に痛いところを突かれ、ズキズキと胸が痛む。
そう……敏腕社長のおじいちゃんに変わって新しく社長に就任したのが、私の実の父なのだ。
父が家具をむやみに安売りしたせいで古くからの固定客が離れ、最近経営状況が思わしくない。
ちょうど私も気に病んでいたところだった。
(やっぱり、久しぶりにお父さんと話すべきかな)
うーんと考えていると、社長が心配そうな顔で私を覗き込んだ。
「どうしたんだ、顔色が悪いぞ」
「えっ……」
純粋に『Berry.by.KAI』のブランドが好きで入社試験を受けたと言っても信じてもらえないだろうし、スパイだと思われるに違いないからだ。
そして実家にも母以外にはここで働いていることは言っていない。
(実家にはいずれ戻ることになる。重要ポストなんて器じゃないし、普通の従業員としてだけど)
ため息をつきかけていると、華さんは思い出したようにクスッと小さく笑う。
「あぁでも、新しい社長さんになってから方針がブレブレで結城家具は赤字続きみたいね。ライバルっていうのはだいぶ昔の話になるのかしら。社長変えなきゃよかったのにね」
「!」
「あの名物社長もかなり歳だから、仕方ないんじゃないか」
華さんと社長に痛いところを突かれ、ズキズキと胸が痛む。
そう……敏腕社長のおじいちゃんに変わって新しく社長に就任したのが、私の実の父なのだ。
父が家具をむやみに安売りしたせいで古くからの固定客が離れ、最近経営状況が思わしくない。
ちょうど私も気に病んでいたところだった。
(やっぱり、久しぶりにお父さんと話すべきかな)
うーんと考えていると、社長が心配そうな顔で私を覗き込んだ。
「どうしたんだ、顔色が悪いぞ」
「えっ……」