俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
ボスの深い黒い瞳に、私だけが映し出される。
思わず動きを止めてしまっていると、いきなりポンッと大きな手が優しく頭に乗ってきた。
「さすがにここ最近コキつかいすぎたよな、体調が悪いなら正直に言っていいぞ」
頭上から降って来た優しい声に、心臓がドッドッと大きく鳴り響く。
「いっ、いえ……私はまったくもってピンピンしております。気を遣わせてしまい、申し訳ありません」
(やっぱり社長、最近距離が近すぎるよ!)
私はぎこちない笑顔を作りながらスッと距離を取り、動揺を隠すように鞄から資料を取り出した。
「……社長。先に今日の会見の原稿を修正したものをお渡ししておきます。一応目を通していただけると」
「ああ、確かに受け取った。ありがとう」
どこか楽し気な社長の微笑みに、じわじわと頬が熱くなっていく。
(やっぱり、私の反応が面白がってる……⁉)
「で、では、先に会場に入ってパワーポイントのデータを渡してまいりますので、私は失礼いたしますね」
深々とボスたちにお礼をした私は、逃げるようにその場を立ち去った。
(なんだか、記者会見が始まる前から疲れてしまった……)