俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う

ボスの深い黒い瞳に、私だけが映し出される。
思わず動きを止めてしまっていると、いきなりポンッと大きな手が優しく頭に乗ってきた。

「さすがにここ最近コキつかいすぎたよな、体調が悪いなら正直に言っていいぞ」

頭上から降って来た優しい声に、心臓がドッドッと大きく鳴り響く。

「いっ、いえ……私はまったくもってピンピンしております。気を遣わせてしまい、申し訳ありません」

(やっぱり社長、最近距離が近すぎるよ!)

私はぎこちない笑顔を作りながらスッと距離を取り、動揺を隠すように鞄から資料を取り出した。

「……社長。先に今日の会見の原稿を修正したものをお渡ししておきます。一応目を通していただけると」
「ああ、確かに受け取った。ありがとう」

どこか楽し気な社長の微笑みに、じわじわと頬が熱くなっていく。

(やっぱり、私の反応が面白がってる……⁉)

「で、では、先に会場に入ってパワーポイントのデータを渡してまいりますので、私は失礼いたしますね」

深々とボスたちにお礼をした私は、逃げるようにその場を立ち去った。

(なんだか、記者会見が始まる前から疲れてしまった……)
< 45 / 225 >

この作品をシェア

pagetop