俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
『快。私、会社辞めるわ』
華からの申し出を、俺は受け入れた。
当時は精神的に限界で、疲弊しきっておりむしろありがたく思った。
けれど俺は、まだ彼女の想いを捨てきれず恋人との関係を継続していた。
結婚は予定通りしたい。わずかな夢を見た矢先……浮気男も華の少し後に退職届を持ってきたことで、彼女たちが続いていることを悟った。
俺たちはほどなくして婚約を解消した。
『華、フランスでも頑張ってな』
『ごめんね、快』
夕暮れ時の社長室、彼女を抱きしめながらそう言った記憶がある。
精一杯の強がりだった。
その時俺は、華を忘れるために今よりももっと会社を大きくしようと、密かに誓った。
仕事に打ち込めば打ち込むほど彼女の存在が薄れていく。
彼女の面影を求め似た女性と付き合ったこともあったが、ふとある時からどうでもよくなった。
完全に吹っ切れたらしい。俺に残されたのは仕事への意欲だけ……。
(もっと仕事ができる秘書が欲しい)