俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
会社の規模が大きくなるにつれ、業務も膨大な量になっていった。
専属の秘書を雇うようになるも俺のペースについていけない男や、色目を使ってくる女性秘書が多く、見切りをつけた時点で新しい秘書を向かい入れる。その繰り返しでいよいよ嫌気が差していた。
そんな時に思い出したのが、結城家具の娘――今の秘書『結城芽衣』だ。
(はは。さっきの華の質問に相当ビビッてたな……)
顔面蒼白になった彼女を思い出し、申し訳ないが笑ってしまう。
(ごめんな。俺はすべて知ってるんだよ、結城)
彼女と初めて会ったのは採用試験の時だ。
『では、あなたにとって家具とはなんですか?』
そんな質問をしてみた俺に、彼女は温かい目でこう言った。
『……当たり前にそこに存在して、家族を繋いでくれる。温かい気持ちにしてくれる。幸せな生活を想像させてくれる。そんな身近な存在ですね』
家柄にふさわしい百点満点の回答をした彼女は、結城家具の娘だとその時点で断定。
もちろん不採用だ。何を考えているか分かったものじゃない……そう思ったのだが。
『それ! そのハンカチを探していました……! よかったぁ……』
うちのブランドのハンカチを血眼に探す彼女の本気を見て、俺の気が変わった。
(まぁ、彼女一人がうちに入ったところで、簡単に会社が傾くことはない)
その後は事務職員として素晴らしい働きをしていると聞いたり、社割セールの際に買いだめしている姿を見たりして……彼女がうちのブランドを本気で愛していることを確信した。
(面接の時に受けた印象はドジだったが、意外に動けるようだし……秘書にしてみるのもアリか)