俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
藤堂社長が笑顔で告げたアドリブは、私が考えた文章よりもすごくシンプルで、とても分かりやすい。
(簡単にファンの心を掴んじゃうな。こんな状況でもワクワクしてしまった)
ブランドの一ファンとして1度は泊まってみたい……そんなことを密かに思いつつ、気を引き締める。
そしてやはり、私の考えた資料の内容とは全然違う形で、会見は進んでいった。
(どうしちゃったんだろう……)
不安に思っているうちに、今回建設されるホテルのデザインについて華さんの口から語られる。
華さんは朝会った時よりもハキハキと話をしており、気は強そうだけどすごく仕事が出来そうな印象を受けた。
(美人だし、仕事もできて、ああやって並んで立つと、よけいに藤堂社長とお似合いだなぁ……)
壇上を見つめながら、今朝の二人のやり取りをぼんやりと思い出す。
藤堂社長に負けじと意見できる華さん……大学の同級生で、立ち上げメンバーで苦楽を共にして、絶対に濃厚な時間を過ごしたに違いない。
(もしかして二人とも、昔付き合ってた……とかあるのかな?)
一瞬頭に過った疑問にズキッと胸が痛む。
(いや、ズキッじゃない。そんなの全然あり得るし)
今まで社長が女性と一緒にいる姿を見ても、特に『ズキッ』なんてしなかったのに。
(最近やたら社長が私に絡んでくるから、距離が近いから……こんな変な感情になるのかもね)