俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う

切ない気持ちになりつつも、記者会見は無事に幕を下ろした。

すぐ社長に『資料の件』を聞きたかったのだけど、会見が終わってメディアによる写真撮影が始まってしまったので、私は泣く泣く他の関係者と会場を後にする。

出てすぐのベンチに腰かけ、とりあえずパソコンで仕事をしながら社長の撮影が終わるのを待つことに決めた。

「資料、資料っと……」

鞄からファイルを1冊引き出し、中を確認した途端……私の背筋が凍った。

(こ、これ……さっきの記者会見の資料じゃん‼ と、いうことは……)

鞄を全力で漁り、私が『今』探している資料を探すけれど、どこにもない。

「社長に間違った資料を渡すなんて……しかも、こんな大一番に」


膝からくずれ落ちる。

秘書に就任して一年三カ月。
最善の注意を払い、会社の近所に越してまで、ミスなくやってきた……のに。
一番大事な場面で大変なミス犯してしまった。


(私、今日でクビだ……)
< 55 / 225 >

この作品をシェア

pagetop