俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。
『クビ』の2文字がただただ頭の中で主張して、パソコンを開いているけれど何も手がつかなかった。
(社長も来ない。というかルイさんも、華さんも……どんな顔で会ったらいいのやら)
ハァーッと大きなため息をつきながら頭を抱えていると、いきなりポンッと肩を叩かれた。
「芽衣お疲れ様~! どうしちゃったの、大きなため息ついて!」
(この声は……)
聞き慣れた高い声に勢いよく顔を上げると、ニコニコ笑う美晴の姿があって……。
無意識に涙がこみ上げてきてしまう。
「み、美晴」
「大丈夫⁉ 一体何があったの⁉」
驚く彼女にこの一大事を話す。
彼女は真剣に聞いてくれた後、うんうんと頷いた。
「でもそんなに心配しなくてもいいんじゃないかな……うちの取材を受けてる時の藤堂快、なんだか機嫌がよさそうだったし」
「え……そうなの?」
どうやら美晴はすでに社長とルイさんの撮影と取材を終えていたらしかった。
拍子抜けする私に、美晴はにっこりと笑う。
「ねね、それよりも聞いてよ! 私、ルイさんにお食事に誘われちゃったんだけど」
「え⁉」