俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
スキップするように遠ざかっていく美晴の後姿を見つめていると、背後からコツコツと足音が聞こえてくる。

「彼女の言い分が事実だとすると、俺のせいでこの前の香水男と別れたということか?」

(こ、ここここの声は……)

イヤというほど聞き慣れた、この低くて甘い声の持ち主は……。

「と、藤堂社長」

頭二つ分上にある、端正な顔はにっこりと口角を上げていた。
と……その隣には、無表情の華さんも立っている。

「お疲れ様、結城。あと素晴らしい資料もありがとう、すごく分かりやすくて進行もスムーズだった」

そう言って彼は、ポンポンッと軽く私の肩を叩く。

(さ、最悪だ……今の全部聞かれていたし、もう確実にクビ……)

さすがに平常心を保っていられなかった私は、
口角を上げることもできず顔面蒼白のまま彼の笑顔を見つめる。

「ほ、本当に資料の件は申し訳ありませんでした。間違ったものをお渡ししてしまっても、私が再度確認すればこんなことには……」

「本当よ、あなた快の秘書としてダメすぎるわ」

「……っ!」
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