俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
華さんの辛辣な言葉に、ズキンッと胸が痛む。

（いや、ごもっともな意見……全部私が悪いんだから）

そう自分に言い聞かせ、私は勢いよく頭を下げる。

「本当に、一番大事な時にあんな凡ミスを犯してしまって申し訳ありません。
クビにされても致し方ないと思っています……」

声を振り絞り、社長の出方を待っていると、頭上からクスクスと笑い声が聞こえてきた。

（え……？）

「お前大げさだな。どうにかなったんだから気にするな」

思ってもみない言葉に思わず勢いよく顔を上げると、藤堂社長はなぜか笑っていた。

「俺がこき使いすぎたせいで、彼氏と別れたんだろ？
まぁこのミスもお前を疲労困憊(こんぱい)にさせた俺の責任もある。今日はこの一年のねぎらいも込めて結城を接待することにするよ」

「え⁉　どういうことですか」

（せ、接待……？　とんだ失礼をしたのは私の方じゃないの……？　訳が分からない）

そう訴えようとする間もなく、藤堂社長に強引に腕を引かれる。

「じゃあ華。こいつと飯食うことになったから、お先に」

混乱した意識の中で社長の声が聞こえてきて、私はとっさに華さんの顔を見た。

「お疲れ様、快」
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