俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
顔をヒクつかせ、手を振っている華さんは見るからに不機嫌そうだ。
そしてすぐに私は睨みつけられた。

(は、華さん?)

ただならぬ雰囲気の彼女を残し、藤堂社長はその長い脚でツカツカとエレベーターホールに向かって歩いていく。
大きな手にしっかりと手を握られてしまっているため、心臓の音がものすごく速い。

(落ち着け。芽衣!)

ちょうどエレベーターの前に到着し立ち止まったタイミングで、藤堂社長の方をクルッと振り向いた。

「社長。私、接待していただくようなことは何もしておりませんし、あの、もしお食事に行くというのなら華さんもご一緒の方がよかったのでは?」

質問し終えると、無表情で聞いていた社長はにっこりと爽やかに笑いかけてくる。

「俺はさっきから『お前を』接待すると言っているんだが」

「!」

「つべこべ言わず黙ってついてこい。分かったな」

「は、はい」

強力な威圧感に押され、私はうっかり首を縦に振っていた。

(な、なんでこんなことに……?)
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