俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
その後、あれよあれよと社長のリムジンに乗せられ、やってきたのは接待の場でよく利用する高級フレンチレストラン。
当たり前に夜景が見える特等席に案内され、向かい側に社長が着席したのを確認し、私も後に続く。
ちなみにその間の会話は、ほとんどナシ。
(何を話していいやら……社長が怒ってるのか、本当に私をねぎらおうとしているのか、まったく見当がつかない)
「では、こちらのコース料理を」
「かしこまりました」
スムーズに注文を終えた藤堂社長は、まっすぐ私を見つめた。
「まずは、お前があそこにいてくれて本当に助かった。礼を言う」
(な、なんのこと?)
訳が分からず目をぱちくりさせる私に、彼はフッと顔をほころばせた。
「さっき結城といた編集者の女性は友達か? やけに親し気だったけど」
「! はい……高校の同級生で、偶然あの会場で一緒になりまして」
(美晴のバカ! 藤堂快のせいで~とかあんなでっかい声で言うから。絶対に裏で色々言ってること思われてる)
ダラダラと冷や汗をかく私に、社長は真剣な声色で訊ねてくる。
「俺のせいで彼氏と別れることになってしまったというのは、本当か?」
(えっ……)