俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
「それは……そうといえば、そうなんですが」
「へぇ……」
(あっ!)
とっさに口を押えた私を見て、社長は優しく微笑みかけてくる。
(やってしまった……こっ、ここは冷静に。ちゃんと自分の気持ちを伝えなくちゃ)
私は緊張を抑え、意を決して目の前の凛々しい瞳を見つめた。
「……確かに、あの時一緒にいた彼とはあの後お別れしましたが、社長のせいでは決してありません。
直接的な理由は、私が彼に対し、そこまで恋愛感情が起きなかった……そのような理由です」
社長は黙って私の言葉を聞いた後、わずかに微笑む。
「なるほど、好きじゃなくて付き合ってしまったと。結城はもともと恋愛にはあまり興味がないタイプなのか?」
「……そうですね。今は仕事が何よりも大事なので」
(あと実家に帰るまでの猶予は三年……あなたの元で全力でやらせていただく次第です!)
とは、言えるわけもなく私は心で強く誓う。
すると藤堂社長は、突然熱い眼差しを送ってきた。
(え……)
「やっぱり結城を秘書に選んでよかった。俺はお前みたいなやつを探してた」
「⁉」
破壊力抜群の褒め言葉に、うっかり心臓が止まりかける。
(い、今なんて)