俺様社長は奥手な秘書の初めてを奪う
「お嬢さーん、着きましたよ」
「ありがとうございます」

いつの間にやら目的地に到着していたらしい。
私はタクシーの運転手にやわらかく微笑んで、手早く支払いを済ませる。

タクシーを降り腕時計を確認すると、 二十二時を少し回ったところ。

「走れば五分……ちょうど三十分以内に到着するな」

ルイ・シェヴァリエのような大きなクライアントであろうと、ひるんではいけない。
それは未来の会社のため、藤堂快のメンツのため、そして個人秘書を勝ち取った自分の自身のため、だ。

私は株式会社CLBKに入社した時、誓った。
藤堂快のもとで働けるのであれば、どんなことを成し遂げてみせる。
それが私を救ってくれた、彼への恩を返すことになるから。

たとえそれが、実家のライバル会社であろうともーー。
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