Rain Candy

会社員、時碧澄（ときあおと）はコーヒーを飲みつつ、パソコンに向かい合っていた。明日までに仕上げなくてはならない資料があるため、残業をしているのだ。

「ふう……」

キーボードに置かれた手が止まる。碧澄は息を大きく吐き、固くなった体を伸ばす。ずっと憧れていた会社で働いているとはいえ、残業は大変だ。

「もう七時半か……。八時には終わるといいな」

もう周りの社員はとっくに帰ってしまっている。昼間は電話の音や部長たちの声が響くこのオフィスは、今はとても静かで少し寂しい。

早く帰ってお風呂に入って寝よう、そう思いながら碧澄がまたパソコンと向き合おうとした刹那、碧澄の視界の端に何か可愛らしい包み紙が置かれた。

碧澄のデスクに、可愛らしいデザインの包み紙に入ったキャンディが数個置かれていた。赤や黄色が色鮮やかで、食べるのがもったいなくなってしまう。

「これ、よかったら食べて。お腹いっぱいにはならないと思うけど……」