Rain Candy
そんなことを思いながら碧澄が歩いていると、こんなにも土砂降りの雨の中だというのに傘を差さないで歩いている人を見かけた。服は濡れて透けそうになっており、ヒールも濡れている。

傘を忘れたのかな、と碧澄が思っていると視線に気付いたのかその人が振り向く。雨に濡れているのは、麗央だった。

「雨宮さん！？」

雨に濡れているせいか、さらに色気が増している。慌てて碧澄は駆け寄り、麗央を傘の中へ入れた。

「何で傘を差さないで……」

碧澄が顔を真っ赤にしながら言うと、麗央の口からは想像もしていなかったことが紡がれる。

「私、昨日彼に振られたの。何だか傘を差すのがめんどくさくなって……」

恋人がいたことに碧澄は驚く。しかし、肌寒い外でいつまでも立っているわけにはいかない。

「とりあえず、こっちに来て」

碧澄は麗央の手を引き、近くにあったカフェへと入る。カフェの中には人が誰もおらず、お世辞にも繁盛しているとは言えない。
< 6 / 9 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop