Rain Candy
「これで体拭いて」

もしも自分が濡れた時用にと、碧澄はかばんの中に入れておいたタオルを取り出す。そしてそれを麗央に渡した。麗央は「ありがとう」と言い、濡れたところを拭いていく。その姿もとても魅惑的で、碧澄は目を逸らした。

「少し、温まっていこう」

麗央が風邪を引くといけないと、碧澄は温かいコーヒーを注文する。眠そうな店員が注文を受け、二人は向かい合って座った。

「……時さんって優しいのね」

ニコリと微笑み、麗央は言う。碧澄は「そんなことないよ」と返した。カフェの時計がチクタクと音を立てる。まるでお見合いのように、どこか気まずい空気が流れていた。

「私の彼ね、自分の夢を追いかけていく人だったの。ずっとホテルの経営をするのが夢で、夢を叶えようとする姿に恋をして、付き合い始めた」

静かなカフェの中、麗央の鈴を転がすような綺麗な声が響く。碧澄はしっかりとその話に耳を傾けていた。

「一緒に夢を語って、努力して、未来を創っていけるって思ってた。この人と一生そばにいたいって思ってた。彼と一緒にいる日々が続いて、進んで、もっと愛して、一生が幸せに終わっていくんだなって開かれていた頃は思ってたの」
< 7 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop