隣の席の一条くん。
初めて…、一条くんに『ひらり』と呼ばれた。


たったそれだけのことなのに、うれしさの波がものすごい勢いで押し寄せてくる。


その波が心地よすぎて、このまま飲み込まれそうなくらいだったけど、わたしはなんとか一条くんの首に腕をまわす。


「好きだよ、晴翔」



ボートの上は、わたしたちだけの異空間。


他もそう。

みんな自分たちの時間に夢中で、1隻のボートの上で愛が生まれたことに気づいてさえいない。
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