隣の席の一条くん。
「これ、借りるよ」


それだけ言うと、勝手にわたしの教科書を奪っていった。


その際に、読むところをシャーペンで指した。


「ありがと」


かすかに聞こえたお礼に、少しだけ胸がドキッとなった。



一条くんが読み終えると、先生はため息を吐く。


「一条くん、自分の教科書は?」

「…忘れました」

「はぁ…。じゃあ、悪いけど花宮さん。一条くんに見せてあげてくれる?」
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